後悔する前に!住宅ローンは年収の何倍までOK?額面ではなく手取り年収で計算しよう

年収の5倍までの算出方法 シミュレーション

住宅ローンは「年収の5倍にすべき」「7倍までは問題ない」などさまざまな意見があり、どれに従えばよいのか分からず困っている方も少なくないでしょう。

実は年収のみで借入額を決めると後悔してしまうことがあります。

本記事では、年収をもとに住宅ローンの借入額を決めることの危険性を解説し、年収の5倍、7倍で借り入れた場合の返済シミュレーションを行います。

ローンを組んだ後に「こんなはずではなかった…」といったことにならないよう、ぜひ最後までご覧ください。

みんな勘違いする額面と手取りの違いによる罠

よく、住宅ローンは収入の5倍や7倍を目安に組むとよいという情報を目にすることがあります。

これは、額面(年収)の5〜7倍という意味であり、各種税金を引いた手取りに対しての割合ではありません。

また、住宅ローンの話題で必ず登場する返済比率も、同様に額面給与をもとに算出される指標です。

このように、住宅ローンの計算は、額面給与で行われることが一般的です。

しかし、額面と実際に自由に使えるお金にはずれがあるため、額面では実際に生活収支がどうなるのか見えてきません。

そのため、住宅ローンを組む際は、手取りで計算し、実際に生活に回せるお金はどの程度になるのかを必ず確認すべきです。

どこでみんな騙されるのか

住宅ローンを組む際は、「返済比率」と「年収倍率」をもとに借入の上限額を決定します。

返済比率とは、年収に対する1年間の返済額の割合を表します。たとえば、年収500万円の人が住宅ローンを組み、毎月10万円を返済に充てる場合を考えましょう。

このとき、年間120万円を返済することになるので、120万円÷500万円×100=24%となります。

また、年収倍率とは、年収に対する住宅ローンの総額の割合を表した指標です。

年収500万円の人が4,000万円の住宅ローンを組む場合を考えてみると、年収倍率は4,000万円÷500万円=8倍となります。

いずれも住宅ローンを組む際に重要な指標です。

しかし、これらの指標だけで決めると、ローンを組んだ後に後悔してしまうことが多々あります。

ここでは、多くの人が騙されてしまう住宅ローンの罠についていくつかご紹介します。

額面ベースで返済計画を立ててしまう

額面ベースで借り入れる額を決めると、想定していたよりも支払いが辛く、生活が苦しくなる場合が多々あります。

このような失敗は、同じ年収でも各家庭によって返済に回せる額が違うために起こります。

年収が同じでも保険や扶養家族の有無などにより手取りの給与は異なります。

また、生活出費も各家庭によって変わってくるはずです。

つまり、額面ベースではその人の返済能力を正確に測ることはできないのです。

額面給与から2割程度引いた額が、手取り額の目安となります。

たとえば、年収500万円の場合、手取り額は400万程度、ボーナスも均して考えると月の手取りは33万程度となります。

この月の手取りから生活費、貯蓄の分を引いた額を住宅ローンの返済に回すことができます。

しかし、1人暮らしの方と結婚して子どももいる家庭とでは、月の生活費は大きく異なります。

単身世帯なら月々10〜15万円程度の出費でも暮らせますが、子どもがいる家庭なら20〜30万円はかかってしまうでしょう。

そうすると、単身世帯では10万円を返済に充て、残りを貯蓄に回すといったことができても、子ども連れ家庭では貯蓄はおろか、10万円の住宅ローン返済のために生活費を削らざるを得ません。

返済比率がいくらで年収倍率がいくらなら大丈夫という考え方では、各家庭のキャッシュフローの実態が反映されません。

返済計画を立てる際は、手取りの給与をベースに考えるようにすべきでしょう。

借りられる額と返済可能な額の違いが分かっていない

銀行は年収の最大8倍まで住宅ローンを貸し出します。

しかし、貸し出してくれるからといって安易に高額なローンを組むのは大変危険です。

なぜなら、収入の大部分をローン返済に充てることになり、生活が困窮してしまうからです。

なぜ、そのような不釣り合いな額でも銀行は貸し出してくれるのかというと、そこには銀行は住宅ローンの債権を住宅金融支援機構へ売り払うことができるという事実が関係しています。

住宅金融支援機構は、固定金利の長期住宅ローンの債権を銀行から買い取ります。

そして、買い取った債権を信託銀行などに預け証券を発行し、それを債券市場に流通させ資金を調達するといった仕事を行っています。

銀行側からすれば、たとえ貸し出したお金が回収できなかったとしても、債権をこの住宅金融支援機構に売却するため、損をすることはありません。

つまり、銀行側には、返済が滞ってもリスクがないので、消費者に収入に見合わない住宅ローンを貸し出すことに抵抗がないのです。

銀行から借りられる分は借りておこうという考え方では、破産するのは目に見えています。

このような失敗を犯さないためにも、自分の手取り額と出費を考慮したうえで、借入額を決めるようにしましょう。

「年収の5倍」の算出方法と実態

年収の5倍までの算出方法

住宅ローンは年収の5倍までにすべきという話をよく耳にします。

住宅金融支援機構の「2015年度フラット35利用調査」のマンションの年収倍率に関するデータを見てみると、確かに2000年代頃は住宅ローンの年収倍率は5〜6倍を推移しています。

しかし、2015年頃には都市圏の年収倍率の平均は6〜7倍に上昇しており、全国平均は6.5倍となっています。[注1]

つまり、現在では年収倍率5倍は、決して高くはないということ!

高い返済比率で購入する人が増えたのではという反論も考えられますが、2000年代から今まで返済比率は20〜25%の間を推移しており、大きな変化はありません。

では、実際に年収の5倍の住宅ローン額を算出し、返済額をシミュレートしてみましょう。

[注1]住宅金融支援機構:2015年度フラット35利用調査[pdf]
https://www.jhf.go.jp/files/300316078.pdf

年収500万円で年収の5倍のローンを組んだ際の返済額

年収500万円の人が収入の5倍の住宅ローンを借り入れる場合を考えます。

このとき、借入額は500万円×5倍=2,500万円と計算できます。

次に、毎月の返済額を考えてみましょう。

返済期間は35年、住宅ローンの金利は1.5%の固定金利とし、返済方法は元利均等方式を採用することにします。

このとき、月々の返済金額は7万6,546円、ついでに返済利率も求めてみると、18.3%です。

返済利率は25%を上限にすべきとされており、18.3%という値は決して高い数値ではありません。

今度は手取り額と月々の返済額を比較してみましょう。

年収500万円の場合、手取り額は約400万円、ボーナスを均して月々の手取り額を求めると約33万円という結果です。

この手取り額から月々のローン返済額を引くと、残りは約25万3,000円、1人暮らしの生活費が月15万円と仮定すれば、月々10万円貯蓄する余裕があります。

一方、家族世帯の月の支出は20万円と安く見積もれば、月々5万円貯蓄に回すことが可能です。

年収の5倍だと希望する物件が買えない可能性が高い

年収500万円の人が年収の5倍を借りた場合、生活費を多少切り詰めれば貯蓄に回すお金も確保可能です。

しかし、実際問題として、2,500万円の物件となると、だいぶ選択肢が限られてきます。

そのため、希望とする物件を購入できない可能性が高いです。

リスクの面では年収の5倍程度のローンは悪くない選択ですが、マイホーム購入で妥協しなければならない部分も出てくるでしょう。

「年収の7倍」の算出方法と実態

年収の7倍までの算出方法

2015年頃から住宅ローンの年収倍率は6〜7倍を推移しており、年収の7倍のローンを組む方も珍しくありません。

このように年収倍率が増加した要因として、住宅ローンの金利の減少が挙げられます。

日本では、2009年頃まで住宅ローンの金利の水準が3%程度でしたが、2019年現在まで減少傾向が続き、今では1%台を推移しています。

住宅ローンの返済額は、実際に借り入れた元本に加え、金利分が上乗せされます。

つまり、金利が下がるということは返済額が減少することを意味します。返済額が少なくなれば、当然今まで以上に借りても問題がなくなります。

これが、年収倍率が7倍前後に増加した理由です。

では、実際に年収の7倍の住宅ローンを借り入れた場合の返済額を算出してみましょう。

年収500万円で年収7倍のローンを組んだ際の返済額

ここでも年収500万円の人が35年ローンで年収の7倍の額を借り入れるケースを考えてみます。

借入額は収入の7倍なので3,500万円です。

先ほどと同様金利1.5%の固定金利で、元利均等方式で返済を行うと仮定すると、月々の返済額は、10万7,164万円です。

これより、返済利率は10万7,164万円×12ヵ月÷500万=約25.7%と計算できます。

返済利率は25%を超えており、7倍で借りるのはリスクが高いであろうと考えられます。

次に手取り額と月々の返済額を比べてみましょう。

年収500万円の手取りは400万円程度であり、月収は約33万円でした。

この手取り月収から先ほど求めた月々の返済額を引くと、約22万8,000円となります。

単身世帯であれば、ここから生活費を引いても十分な貯蓄が可能です。

一方、家族世帯では、生活費を差し引いたらお金はほとんど残らず、急な出費に対応できなくなるでしょう。

年収の7倍だと税金面では有利になる

年収500万円では、年収の7倍の借入を行うと貯蓄がほとんどできず、リスクが高くなります。

しかし、税金の面では5倍よりも7倍で借り入れた方がお得です。

なぜなら、住宅ローンは税金の控除対象であるためです。

住宅ローンの借入額の1%、最大40万を所得税から控除できます。

また、住民税に関しても最大13万6,500円まで控除可能です。

そのため、場合によっては借入額が多い方がお得なこともあります。

年収に見合った借入をしよう

自分の年収に見合わない額の物件を購入することはやめるべきです。

住宅ローンの返済が生活費を圧迫し、自分の首を絞めます。

巷では「年収の5倍で借り入れるのがよい」「7倍までなら大丈夫」などさまざまな意見が飛び交っており、これらの目安はとても分かりやすく参考にはなりますが、あなたにも当てはまるとは限りません。

なぜなら、人それぞれ生活にかけるお金やライフプランは違うからです。

将来に備えて毎月20万円貯金したいと考えている人もいれば、子どもが3人いて毎月最低30万円の支出があるという方もいます。

このようにみな置かれている環境がまったく異なるので、年収の何倍という指標のみで住宅ローンの額を決めるのはいささか心許ないのです。

自分自身の年収、手取りの給与、生活費、貯蓄を総合的に判断し、余裕を持って返済できる額を検討し、借入額を決めるべきでしょう。

まとめ

額面だけでは生活費の収支、お金の流れが見えてこないため、住宅ローンの借入額を額面で考えるのは危険です。

私たちが実際に使えるお金は税金などを差し引いた手取り額。

そこから、生活費に回す分、貯蓄に回す分、ローン返済に充てる分と振り分けていくはずです。このようにお金の流れをまとめると、住宅ローンを借り入れることで、毎日の生活がどのように変化するのかが明確です。

住宅ローンの返済計画は手取り年収ベースで考えるよう心掛けましょう。